2008年9月2日火曜日

秋の初日。

秋には初日がある。その日からクリスマスの飾り付けが始まる直前まで、私たちは大学の中庭にある芝生の上に集まって、たばこをふかしていた。誰かが紙コップのインスタントコーヒーを持っている。誰かが文庫本を読んでいる。秋の陽がゆっくりとキャンパスの並木を色づかせ、レンガの壁にからまった蔦も、日が経つにつれてだんだん壁と見わけがつかなくなっていく。「『最後の一葉』みたいに」だ。

しかし、私はその後、たばこをやめた。数えてみれば、吸わなくなってから実にもう10年以上になるのだった。それでも秋の初日には、舌の上に、煙が香る。

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