2008年9月23日火曜日

色えんぴつを磨く。

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都心部へ出てきたが、打合せと打合せのあいだにちょうど45分ぐらい空いてしまったので、 カフェで少々仕事を片付けることにした。

2階の窓際に座ると、通りの向こうは文房具屋で、中から人が出てきて店先の商品にぱたぱたとはたきをかけ始めるのが見えた。ふと見ると、となりの席にはかなり年の違う女性二人連れで、なんとなく深刻そうな話をしているようだ。

まあ、それはそれとしてパソコンを開くと、さっきの打合せのことがすっかり蘇って、しばらくは仕事がはかどった。ときどき窓の外を見ると、文房具屋の人は相変わらず画材ケースの積み方を直したり、スケッチブックを一つ一つきれいにしたりしていた。そのうちに色鉛筆の一本一本を磨き始めるんじゃないだろうか。

すると、隣の席で背中を向けている年配の方の女性が言った。
「私の使う言葉は本当で、話はうそです」
相手の若い方の女性も、とはいえ、実は私の席からは顔まではよく見えなかった。だからほんとうにいったいどれだけ若いのかはわからない。ただ、彼らの態度にはどこかしら、二人の年齢に段差があることを窺わせた。彼女は即座に言った。
「じゃあお話はうそもあるんですね?」
「はい」
「わかりました」
「でもね、ゆう子さん、言葉は本当だというのはわかりますか?」
老婆はなかなかしつこいのだった。
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